昨年末にツイッターでお知らせしましたが、当店では小麦粉を国産のものに切り替えていくためのテストを続けておりました。
私が製菓学校に通っていた約20年前は国産小麦の生産量はごくわずかで、あまり一般には出回っていないと教わりました。
小麦に関する授業は日清製粉から講師を招いて行われ、そのように教わりましたので確かだったんだと思います。
自分としてはつい数年前に学校を出て、今も当時とあまり変わらない気持ちでお菓子作りをしている感覚なんですが、世の中はものすごいスピードで変化していて、原料に関しても常にアンテナを張っておかないと、あっという間に昔の常識が今では非常識になってしまいます。
今でも小麦粉の9割は外国産なんですが、国産の小麦粉もいろんな産地、メーカーからお菓子作りに適したものが流通しており、価格面でも以前と比べると使いやすいところまで下がってきているんです。
ただ、その中から自分がイメージする特性の小麦粉を探し出すのは一苦労でした。同じ小麦粉とは思えないほど銘柄によって性質がまるで違うんです。焼き菓子に使用してみてやっと満足いくものが見つかったとしても、蒸し物にはまるでダメだったりします。
価格もまちまちですので商品価格を上げずに済むくらいのコストアップに抑えなければなりません。
これまで長い間ずっと使っていた小麦粉は日清製粉バイオレットなんですが、これが本当に優秀な小麦粉で「きめの細かさ」「焼き上がりのふんわり感」「柔らかさの持続性」「白さ」それに、焼き物、蒸し物とオールマイティに使える安定感。
これまで当たり前のことが、いろいろな小麦粉をテストしていくと、その良さを改めて認識することになりました。
ただし、あくまで外国産なので長い船旅による輸送時のカビや害虫を防ぐ処理が欠かせません。ポストハーベストの問題など安全性を考慮するとコストアップしてでもやっぱり国産小麦は安心です。
最終的に採用に至ったのは北海道産の小麦粉です。これまでの小麦粉より白くはありません。でも焼き菓子にしたときの食感、味は美味しいものができました。そしてテストの結果、赤飯まんじゅうやお火焚きまんじゅうなどの蒸し物にも適していることがわかったんです。
一方、使えない商品としては、ういろう、みな月など流し物にはまったく適していませんでした。国産小麦は外国産よりグルテンが少ないと言われていますから、この特徴が悪い方に出たものと思われます。これからは用途によってバイオレットと使い分けることになります。
現在、当店で国産小麦を使用しているのは、「栗みかさ」「栗栖野」「赤飯まんじゅう」の3商品です。他にも国産に切り替えられそうな商品があれば採用していく予定です。
これからも食の安全性が注目され続けるのは間違いないですから、国産小麦もますます盛んに生産されるのでは、と思います。そうなれば、より良い商品を作れる可能性があるので、新しい銘柄が出てきたら引き続きテストしてみようと考えております。